夏の魔物<by
カフカ>
(注)歌詞でありません。 曲の解釈を、勝手に解釈したものです。
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確か残暑の厳しい夏だった。入道雲が印象的だった。
出掛ける際に僕らの住んでいる部屋を見上げたら、
ちょうど君はシーツを干そうとしていた。昨晩は暑かったし汗もシーツにしみ込んでいた。
君はベランダから僕を見下ろして少し微笑んだ。 「いってらっしゃい」
知り合いもいない錆び付いたこの町に越して来てだいぶ経った。新しい生活にも慣れて来た。
親兄弟の反対を押し切って僕らはこの町に逃げてきた。二人ぼっちで。
幼稚な子供の様に、僕らは無謀な約束を若くして交わした。
僕らは君と暮らすことを夢見てた。君との間にどんな子が産まれるかとか想像したりさ。
傘を持ってくれば良かったな…。夕立ちだし少し雨宿りすれば止むだろう。
水たまりもすぐに出来て、さっきまであった僕の影は徐々に消えてなくなった。
見上げてみたらクモの巣に水滴がついていて光って綺麗だった。
ふと…「あの日」の彼女の泣いている顔を思い出した。
君の膨らんだ下腹部を見ながら思った。下ろせば僕らの平和な日々は続く。
死産か…僕が…決断をくだす必要は無かった。
一目見たかったな。君に似てたんだろうなぁ。
説得も口実も世間には通用するはず無かった。
これで良かったんだと思う。これで。
君とまた逢えるかな。いつか。同じではなくとも受け継いだ君と。
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