スピッツの歌詞解釈のコーナー

田舎の生活 by らっこ


(注) 歌詞 でありません。曲の意味を勝手に解釈したものです。

今までありがとう。二人で暮らした日々。

二人で過ごした長い、長い時間。


まだ僕らの若かったころ、何もかもが輝いていて、
何もかもが新鮮だったよな。

沢の水はいつも冷たくて、裏の畑はいつも緑にあふれていた。
山を歩けば、走り抜けていったウサギはこっちを見て笑い、
笹百合の花は楽しそうに咲いていたっけ。


朝一番に収穫するトマトがおいしいんだ。お前の分ももちろん取っておくよ。
鳥小屋の鶏がせわしなく、朝を告げる。
お前は、朝飯の準備をしておいてくれ。おれは畑に行ってくる。


日曜の今日は学校も休みだ。子供らは朝から虫取り網とカゴを持って出掛けていった。
昼には帰ると言っていた。
母さん昼飯はなんだ?
おまえは大根の泥を落としながら、微笑んでいた。そんなに俺の寝グセがおかしいか?
いいだろう、日曜なんだから。


縁側で温い日差しを浴び、まだ汗ばむ陽気だが、陰に入ればいくらか涼しいもんだ。
その眼前で子供らはカブトムシを戦わせ、俺はそれをぼんやり眺めていた。
そういや、親父が真っ先に教えてくれたこと、それはカブトムシの獲り方だったっけ。
きっと俺たちはカブトムシが好きなんだな。
お前が大人になって、子供ができたら、
カブトムシを獲りに行くはずだ。

だっておれの子供なんだから。その子供の子供も、
さらにそのまた子供もきっと。


お前の微笑む写真、子供の運動会、渾身の出来の野菜、初孫の写真。
いろいろ写真に収めてきたな。白黒でも、心の中では情景が鮮明に蘇る。

そんなオレたちも、もう歳だな。

お前は倒れた。



きっと助かる。絶対に助かる。
神様は聞いてくれると思った。悪いことなんて何一つしちゃいない。
必ず届くと信じていた幻。

おかえり、とか、ご飯ができたよ、とかどうしてこんなどうでもいい言葉が鮮明なんだ。
もっと愛する言葉を二人で交わしていたと思ったけどな。


写真を見ながらおまえとの会話を思い出す。
でももう戻ってこない。心の中に、しまっておこう。
身体は老いたけど、
輝きを失わない銀の箱へ。

ネガの街は確かに存在した。あの日々は確かに存在した。
また二人で愛し合う日々がやってくる。


次の時代でまた逢おう。僕らは輪廻の上にいる。


らっこさんからの投稿です。