めざめ (作者:あつこ)
めざめ【4】
「い、居るよ、友達・・・」
どもりながらそう言った翔太が私はくやしかった
こんな時間に、こんな場所に来ているのだからてっきり同じ境遇なんだ、と少しでも期待した自分が情けなかった
なんだ、居るんじゃン。友達。
学校も、家も、塾さえもみんな嫌い。
友達も親も先生も一瞬で悪魔になる
でも、もう慣れた。
「サオリさぁ、マジでありえない。友達の好きな人とるって最低」
記憶が、あの目が、降りかかってきた拳が、フラッシュバックする。
知らない、私はそんなこと知らない。いくらそう言っても誰も信じない。
先生すら私を信じてくれない。
「詩織、大丈夫?病院行かなくちゃ、」ママの甲高い声が鳴り響く
幼い病弱の妹を両手に大事そうに抱えて、車のキーを手にして家を出て行く
「ママ、どこに行くの?」
そう言う暇すら私に与えず詩織を抱いて行ってしまった。
たぶん、この調子じゃあ朝まで帰ってこない。お夕飯どうしよう、なんて思う。
たぶん、ママもパパも私より、詩織を大切にしている、
そんなのもっともっと小さい頃から知っていた。
出来の悪い私を疎ましく思ってるのは、ずっと感づいていた
「お前は、あの男に似ている」
ママは何かあるとそう言って、私を無視した
パパなんて本当の娘じゃ無い私になんか愛を注ぐはずが無い。
「本当の娘」の詩織の方が可愛いのは決まってる。そんなの最初から気づいてた
誰も、目を合わせてくれない
久しぶりに人と話した
この人は私に目を合わせて話を聞いてくれた
それが、そんな些細なことが本当に嬉しくって、期待したのが悪かった
「ふーん」
と動揺を必死で隠して私はまた、柵の下の遥か遠い地上を眺めた
汚い、世界は美しくなんか無い。
汚れていて、嘘ばっかりで何も信じれない。
未来は明るくなんか無い。
このまま、柵を越えて空へ身を投げ出してしまおうか。
そうしたら一瞬でも落ちていく間だけでも世界は、・・・・美しく見えるのではないか
この、まだ何も知らないような少年を一緒に連れて行ければ、どんなに良いだろう。
でも、彼には友達、が居る。
連れて行っては行けない、お前は所詮独りなのさ。と神様に見放された気がした。
飛びたい、逃げ出してしまいたい。
あつこ 著