スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ 【28】

「・・・・7度8分。完全に熱ねぇ。」かったるそうに体温計を俺から取って,呟いた
「母さん、これから仕事だからもう行くけど、寝てるのよ。学校には連絡入れとくから」

「・・・うん、行ってらっしゃい。」
「それと、お昼ご飯、冷蔵庫におかゆ作っといたからテキトーに食べときなさい」
「うん、うん。」
「じゃ、行ってくるから」


情けないことに俺は風邪をひいた。夜風にあたりすぎたのか、どうかは分からないけれど――寒い。
久しぶりの母さんとの会話がこれかぁ、
久しぶりに母さんの顔を見た、なぜか懐かしく感じた。

時間は、7時45分。
上半身を起こして、窓から下を覗いてみる
近所の子や、先輩たちが学校に行こうとしている。
サオリさんは―――いるはず、無いか。
そう思うと馬鹿馬鹿しくなって俺はまたベッドに倒れこんだ

だるい、頭が重い。なんとしても夜までに治さなきゃ
だって約束したんだ。サオリさんと。明日また一緒に話そう、って。
サオリさんにとったら嘘なのかもしれないけれど、少しでも俺は信じてる。

サオリさんの手首の傷が甦る
痛々しく、重く、生暖かい。ああ、なんでこんな風にして俺たちは出会ってしまったんだろう。
胸が、痛い。

懐かしい歌をフッと思い出す
サオリさんの笑顔が浮かぶ
繋いだ手のあたたかさや、柔らかさは確かに生きている、と感じた。
生きていたい、と。俺は、――――思ったんだ。
裏切りなのかな、でも。
サオリさんと共に未来を歩みたいと思う。
一緒に手を繋いで階段を一つずつあがって行こうよ。俺らならきっと出来るよ。

・・・胸が痛い。サオリさん・・・今すぐ会いたい。話したい。笑って欲しい。
ああ・・・・、頭が重い。

こんなことばっか考えちゃうのはやっぱり熱があるからなのかな。

「サオリさん・・・」涙が出てくる、会いたい。

サオリさんもこんな風に思っていてくれたら俺は嬉しい。
あの人と共に、――――生きたい。
サオリさんもそう思ってくれたら、嬉しい。

そんなことをぼんやりと考えながら俺は眠った。・・・夜のために

あつこ 著