スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

Y (作者:優)

Y 【10】〜最終話

「どうした?やけにスッキリした顔だな」

「そう見えるならよかった。…それより山岡は仕事休んで平気なのか?」

「崇史があんだけ弱ってたのに、仕事に手がつくかよ」

そう言って山岡は自分で買ったコンビニのおにぎりをほおばった。
山岡が再び来たのは美奈が消えてから2時間後のことだった。
心配性な山岡は崇史の様子が気になって朝早く家を出たらしい。

「心配かけたな」

「いや、元気になったんならよかったよ。良い夢見れたか?」

「あぁ。おかげで気分がいい。あ、そうだ山岡」

これ返すよ、と言って昨日渡された瓶を返す。

「もう夜は怖くない」

そう言うと山岡はほっとした表情でそれを受け取った。

「久しぶりに見たな、崇史のそんな生き生きした顔」

「…俺も久しぶりに見たんだ」

美奈のあの笑顔。
幸せだと言うときの美奈の笑顔は心の中でキラキラと輝いている。
この光は暗闇を照らしてくれる。きっとこれは俺が死ぬまで消えないだろう。

「美奈の分まで幸せになって、いつかあいつに自慢してやる。
二度と会えないとか言ってたけど…きっと」

「美奈も待ってると思うよ…」

「そうだな…」

窓に目を向けると、一羽の白い鳥が飛んでいるのが見えた。
美奈の葬儀のときと同じ青い空に浮かぶ真っ白な鳥。
どんどん遠くなるその白を見つめながら呟いた。

「いつか会いにいくからな…約束だ…」


【あとがき】

ここまでお付き合いいただいた方、本当にありがとうございます!
毎回のことですが文章とか構造メチャクチャです(汗)

とりあえずこの作品では『約束』と『Y』を大事にしようと思いました。

崇史に会うという約束を果たし、満足している美奈は崇史の一方的な約束なんか知りません。
いつか崇史が約束通りに美奈に会いにいくことを期待してます。(たぶん鳥にはならない)

『Y』は分岐点ということを表すとどこかで知ったので(スピ研かな?)2人の人生を別にさせました。
美奈はそれでもいいと思ってるはずです。幸せだったから。
崇史はYを下から上に、ではなくて上から下にしたいと思ってると思います。
離れていた2人が一緒になる、みたいな。崇史の約束が果たされればその願望も叶います。
私としてはぜひYを逆さにしてほしいです!

あとがきというか説明になってしまいました;
読んでくださった方、本当にありがとうございました!

優 著