スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

スノードロップ (作者:香夜)

スノードロップ 【6】

「・・・俺、引っ越すんだ・・・」



「・・・え?」



“引っ越す”?
何言ってるの・・・??



「はっ・・・。圭汰、悪い冗談はやめようよ・・・」
「本当だよ」


頭が・・・真っ白になってく・・・


「嘘だっっ!!絶対嘘!!」
「本当だって!!」
珍しく、圭汰が怒鳴った。

「・・・っ」

やばい・・・ 今喋ったら・・・泣きそう・・・

あたしは瞳を瞑る。
ぐっと、こらえる。

「・・・ど・・・どこに引っ越すの?」
あたしは、今にも泣きそうな
搾り出すような声で訊いた。


「・・・東京」


「・・・そっ・・・か」


もう、ダメだぁ―


「明日香・・・?」

「いか・・・いかないでよ・・・」


わがままだって分かってる
でも・・・


とまらない


とめられない



滑り落ちそうになる―




「明日香・・・」

圭汰はあたしの頬に、優しく手を当てる。

「・・・俺だって、お前と離れんの 寂しいよ・・・。
 でも、これが“最後”ってわけじゃないだろ?」

彼は、これ以上にない優しい口調で話す。

「向こうに着いて、落ち着いたら 
 また会いに来る。
 明日香に会いに・・・」


圭汰・・・、圭汰・・・



「だから、それまで待ってて」


「明日香からも会いに来いよ?」




あたしは彼の言葉に  ただただ

頷くだけでした。



涙のせいで


目の前が


圭汰が


滲む・・・






でも  今なら



言える気がした



止め処なく、溢れ出す






この気持ちを・・・―

香夜 著