テレビ (作者:ひかる)
テレビ 【9】
沈黙が続いた
デニーは言い切った、これで一つ肩の荷が下りたようだった。
「私、マントの怪人にやっつけられてもいいよ。
…まだ死にたくないけどね!
「ミカ…元の世界に戻ってしまうのだぞ。お前の母親も、ミカを苦しめるのではな
いのか。
「私、もう慣れちゃってるから
『美加…』
「慣れてはダメだ!!そんなことに魂を削ってはいけない!
「じゃあ、魂は削らない!私がいいって言うんだから、もういいの!
ここでの生活は楽しかったし、ファーラーと赤ちゃんを助けなきゃならないの!
「ありがとう。
デニーはもう一度、ミカを抱きしめた
同情なんかじゃなく、愛情一杯のままで。
その後、光線が屋敷を埋め尽くして、優しかったデニーは凶暴なマントの怪人にな
った。
やられる前に、私は見たの
デニーの目は、純粋で、涙で輝いていて、私、一生忘れないからね。
どんなに苦しくとも、私、デニーとファーラーと、
この世界の空気も空も、
朝に鳴く小鳥の鳴き声や一緒に食べたパンの味も、みんなみんな忘れないから。
忘れてやらないんだから。
ひかる 著