タイム・カプセル (作者:えりんこ)
タイム・カプセル 【16】
「草野さん!起きて!起きて!」
「あひゃぁ…まだまだぁ!!」
「未来ちゃんから電話ですけど。」
その一言で酔いがさめたようにガバっと起きた。
「未紀ちゃん!水!」
「はい!」
水を飲んで目を覚ました草野ははりきって電話にでた。
「…もしもし?」
「あ、正宗さん。お目覚めのようで…」
受話器を少し遠ざけて未紀の方をビックリした顔で見た。
「え?本当に未来ちゃん?」
「もうねすっかりママさんになってしまって…」
「声!変わってない!あのまんまだ!」
「あ。ホントに?まだまだ若いのかな?」
「いやー…」
「ちょっと…いやーって何よ!失礼ですね!」
「ははは。でも娘さんもそっくりだ!」
「え?そうかなぁ?でも、可愛くなくてねぇ!」
その発言で未紀は少しふてくされた。
「いやいや…そんなことないと思う!うん。」
「あのね!冬かな?デビューするんだー♪」
「あ、そうなんだ!あれで消えちゃったからあとのこと分かんなくて…」
「でも買ってくれるかな…?」
「もう私は買ったよ!正宗さんのところ行く前にね!」
「お買い上げありがとうございます。」
「いえいえ。でも、もうこっちではスピッツ人気者だよ!」
「えーー嘘でしょ。ありえないって。」
「じゃあ、こっち来る?」
「来るっていったって…行けるようだったら行ってます!」
「ははっ!じゃあ、ちょっと未紀に代わってくれる?」
「はーい。未紀ちゃーん。」
「…はいはい。どうだった?」
「すっごい久しぶりに声聴いたな〜」
「そっか!でも、なんで話せるんだろう…」
「ねーうん…じゃあ私は年寄りなんで眠いんですよ!では!」
「はーいお休み!」
受話器を降ろし、後ろを振り返った。すると、草野は少し明るくなってい
た。
お茶を出すとさっきの夢のような出来事を嬉しそうに話した。
「ぷはー!未来ちゃん変わってなかった!」
「そうですか?私は全然…」
「いや!あのまんま!うん、可愛い…ポ」
「でもどうしてつながったんでしょうね?」
「それは!俺の愛だー!」
「ふざけたこと言ってるんだったら、とっとと寝てください、もう寝ますよ
ー」
「…はーい…いいじゃん!ちょっとくらい!」
唇を尖らせブツブツ文句を言いながらも布団にもぐった。
「そういえば、草野さん。」
「ん?」
「もうすぐデビューするんですか?」
「うん。スピッツっていうんだけど結構地味だよw」
「へぇ!でも、向こうでもスピッツっているんですよ!すごいカッコイイん
です!」
「そのスピッツという人たちは俺らとは全然違うだろうなー」
「いや…ボーカル&ギターが草野さんでギターが三輪さんでベースが田村さ
んで、ドラムが崎山さんって人なんですよ〜」
「え…それって俺らのバンドメンバーまんまじゃん!」
「向こうではもう超有名ですよ!」
「そうなのか…未来ちゃんの言ってることは本当なんだなー」
えりんこ 著