スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

楓〜kaede〜 (作者:ホワイトラビット)

楓〜kaede〜【3】

そんなある日、僕は引っ越すことになった。
しかも東京だ。
ここは、仙台。
遠すぎる。
お母さんは、
「3年の終わりに引っ越せてよかった。6年だったらいじめられちゃうわ。」
そんなこと言って笑ってる。
「あんまり悲しい顔しちゃダメよ。」
分かった、とうなずいた。

とうとう学校で発表された。
僕がいなくなること。
東京にいくこと。
彼女はひどくおどろいていて、僕が近づくと去っていく。」

そんな時ぼくは、彼女と二人っきりになった。
「なんで?なんでそんなにさけんの?」
「・・・。」
「なんで話してくれないの?」
「・・・。」
沈黙は続いた。
「だって・・・。」
長い沈黙を破ったのは彼女だった。
「だって、一言もしゃべってくんないし、その前に言ってほしかった。」
彼女の目には泪がこぼれそうなほどたまっていた。
「ごめん・・・。」
僕にはそうとしかいえなかった。
「いいよ。別に。でも、人一人いなくなったら、いやだから、今のうちに慣れておかないと、楓がいなくなるとき、悲しくなっちゃう。」
僕は、胸が苦しくなった。
「ごめん・・・。」
やっぱりそれしか言えなかった。
彼女は泣いていた。
僕のために、泣いてくれた。
僕を想った泪。
それは大切なものだと想った。

ホワイトラビット 著