マリンブルーの先 (作者:ひかる)
マリンブルーの先 【2】
どれほどの時間をここで過ごしてきたのだろう。
君との出会いは、僕らがまだ世の中を知らず、社会の雑音に興味を抱いていたころだった。
物語が好きだった君は、新しく知った童話や話を僕に一生懸命話してくれたよね。
正直、国語の授業に堅苦しさを感じていた僕には難しい世界だったけれど
君の頭の中を少しばかり覗けているような気がして、うんうんって頷いていた。
そんな君がある病に侵された。
当たり前のように想像していた、これからの未来を共に過ごせないなんて信じられなかった。
「死んじゃったら、私の物語も終わりになっちゃうね。
―私は私のままでいたい。
行き着くところが、誰にも見えない闇の中でもいいから、私は存在を消したくない。」
そう言い残して、僕をおいていってしまった。
「生まれ変わっても、二人で物語を紡いでいこうね。」最後の言葉だけは忘れられない。
それからの日々は、僕には絶望しか与えられていなかった。気づけば今の世界にいた。
ショックのあまり食事を忘れて餓死したのか、睡眠薬でも飲みすぎたのか
死に至った原因は今でもわからないままだ。
この世にも新聞があって、テレビ欄のような「闇行き欄」を見て
後に君が本当に闇にいってしまったことを知った。
僕は、暗そうで寒そうな「闇」がこわかったけれど君に会えるのなら行きたいと思った。
それからは、お昼に起きて生活のために働いて夜になったら眠る。
そんな単調な生活の繰り返しだった。終わらないような気がしていた。
ちょっとだけ、ルールを破ってしまおう。そう思い、田畑を耕す時間に散歩に出た。
ひかる 著