スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

eternal2 (作者:ナナ)

手を伸ばす 【1】

 こうして入院している間にも、時は私の知らないところで流れていく。
 私が入院して、2ヶ月ほど過ぎたある日、そう思った。
 こんな身になると、為すことも、為す術も無く時間は過ぎていく。
 今、ユウトはどうしているだろう。
 元気にやっているだろうか。
 いや、ユウトのことだから2ヶ月たった今でも落ち込んでいるに違いない。
「はやく、夢が覚めればいいんだけれど」
 そう呟くが、それは空気を震わすことは出来なかった。
 それより、自分の置かれた状況を把握できることに、アオイは心底驚いていた。
 意識を失った人間が、自分の置かれた状況や周りの様子を窺い知ることが出来るはずが無い。
 初めのうちは、置かれた状況にただただ驚くしかなかったが、2ヶ月経った今ではそれにも慣れていた。
 そんなことが出来るようになったのも、入院するようになったのも、全ては、あの頭痛から始まっていた。

ナナ 著