スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

eternal2 (作者:ナナ)

手を伸ばす 【12】

「もしもし…」
 数ヶ月振りで、喉は少し擦れた声を出した。
「もしもし…」
 相手も、同じ言葉を返してくる。
 その‘もしもし‘には、驚いたというような気持ちが読み取れた。
「久しぶりだね…」
 私は、顔を赤らめて言う。火照るのがよく分かった。
「うん…」
 鼻をすする音が聞こえる。
 声を聞くのがそんなに嬉しかったのだろう。
「今日、退院だから、家に帰るね」
 そう言い残して、一方的に電話を切った。

ナナ 著