スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【20】

「なぁ、今日俺んちでゲームしない?」

「悪い、俺さ今から塾だから無理だわ。」
「ん、俺も。そーいえば修ってどこ受けるの?」
「あー、ほら隣町の中学。」



こうして俺はまた1人で石蹴りをしながら帰宅する。話に入ることなど出来ないのだ。
「じゃ、俺家ここだから。またなっ」と軽く手を挙げて別れのあいさつ。

「おー、またな。」と一瞬だけこっちを見て修たちはまた話を続ける


エレベーターで12階まで上がる、

扉が開いて、道を進んで鍵を開けて―、またドアノブに手をかけて。
リビングの食卓机に千円札が3枚、コップの下に置かれている
それに面倒くさそうに付け加われた殴り書きのメモ。

翔太へ 
今晩は帰りません、お金を置いておくので晩ご飯と朝ご飯好きに食べてください。
火の元と鍵に気をつけておいてください

今月に入って、こんなメモは9枚目
渡されたお金は今日を含めて千円札が7枚と5千円札が2枚。一万円札が1枚。

時計はまだ4時半を過ぎたばかり、早く夜になればいい。サオリさんに会いたい。


「今日の夕飯、どーしよ。」

ぼそっと思わず呟いた、なんだよ。結局食うことかよ。と我ながら情けない
冷蔵庫にはビール瓶がいくつかと調味料とチーズぐらいしか無いし。お米も少しだけ。
「・・・・・はぁ・・・」
とにかく宿題をとっとと終わらせて、適当に弁当でも買ってこよう。と本能で動いた。


今さらながらやっぱり俺は子供なんだなあ、と痛感した。

あつこ 著