Y (作者:優)
Y 【2】
「やくそく」と言い終えるのと同時に、握っていた小さな手から力が無くなっていくのを感じた。
「…み…な?…美奈!美奈!」
何度も名前を叫んだが、その目が開くことは二度と無かった。
翌日の美奈の葬儀には高校の同級生が大勢来ていた。
男子も女子もみんな美奈の名前を呼びながら泣いている。
外で風に当たっていると、その内のある男が近づいて来た。俺の幼馴染の山岡だ。
山岡は沈んだ声で話かけてきた。
「美奈…逝っちまったんだな…。この間…二十歳になったっていうのに…」
「あぁ…」
「お前と美奈が付き合い始めてから…どのくらい経った?」
「二年と、少し」
「そうか…。まだ、幸せでいてほしかったな…」
「あぁ…」
俺と美奈は二年ほど前、まだ学生だったころに付き合い始めた。
美奈が心臓に病気を持っていたため、いつも会う場所は病室。
外出することはめったに無かった。
それでも俺は楽しかったし、美奈のことを愛していた。
美奈が息を引き取る瞬間も、ずっと一緒にいたいと願っていた。
それはもう叶えられない夢だけど。
「すまねぇ、崇史…。お前が一番泣きたいよな…」
ギュッと閉じられた山岡の目からは、次々と涙が流れていた。
ごしごしと涙を拭う山岡の背中をそっとさする。
「今日まで…。短かった、な」
そう言って空を見上げると少し涙がにじんできた。
優 著