スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

クリスピー (作者:ひかる)

クリスピー 【1】

――今は1993年、9月26日。ここは東京。


今日は、僕の大好きなバンド‘スピッツ’が4枚目のアルバム「Crispy!」が出る記念すべき日。

ああ、僕?紹介が遅れましたっ!

僕の名前は翔(しょう)って言います。高校を卒業してアルバイト生活の19歳。

僕がスピッツに興味を持ったのは、いろんなところで地道に活動しているのを見て。

僕が今、一番好きな曲は3枚目シングルの「魔女旅に出る」。意外に意外かな?

懐かしさじゃなく、寂しさ、悲しさを感じる。でも聴き心地がいい。

今は草野さんの歌声、ギター、三輪さんのギターも、田村さんのベースも、崎ちゃんのドラムも

スピッツが奏でる音が好きだ。

なぜ、スピッツが一部の人にしか知られず、人気が出ないのか、僕にはわからない。

―この後、この「Crispy!」が、スピッツを世間に知らす第一歩になろうとは
まだ誰も知らなかった。


翔「よし!念願の「Crispy!」買えたぞっ!!早速聴こう!

楽しみにしていた「Crispy!」は、1枚にいろんなものが詰まっているようで

期待を裏切らなかった。

数日後、翔は何気なく外へ出た。

いつもと変わらない街並みに、翔はなんだか飽きていた。

こんな時はいつも歌う。小さな声で、それでも自分は心地がよい。

「♪クリスピーはもらった〜 クリスピーはもらった〜
  ちょっとチョコレートのクリスピー・・

翔の歌声がかすかに途切れた。

目の前にいたのは、とても笑顔が似合う女の子だった。

翔は、ぞくに言う一目ぼれをしてしまったのだった。

ひかる 著