スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

ハニーハニー (作者:P)

ハニーハニー 【7】

わたしは、朝早くからの散歩が習慣だった。
この頃行ってなかったな・・・・と思い、出かけて見ることにした。
部活がはじまってから、忙しくて、1回も行ってなかったな・・・・・。
「部活か・・・」
その頃、わたしはもう、退部をしていた。
すこしは落ち着いたが、やっぱりまだあの記憶は鮮やかだった。
失恋はもうあきらめた。
2人、味方が減っただけ。
そう思っていた。
いい気分転換になるといいなと思って散歩をしてみたが、やっぱり秋は寒い。
近くの公園によった。
―――誰かいる・・・・???
ベンチに、身長の小さい人(子?)が座って、本を読んでいた。
後ろから近づいた。
―――あ、風だ。なんであいつがこんなとこに・・・・・。
そこにいたのは、同じクラスの工藤 風。
こいつも当て字が使われてて、『風』とかいて『ハヤテ』と読む。
「うわあっっ!!」
「なによ」
気づかれた。
「なんでそんなところにおばけみたいに立ってんだよ。びっくりすんじゃんか!」
「こんなことでびっくりするなんて、最近の男は臆病だなぁ・・・・。こっちだっ
て、こんなちっこい小学生が、なんでこんなところにいるのかと思ったよ」
「俺は小学生じゃねえよ」
「あ、自分のことだとお解かりで」
「うっ・・・・・・。お前こそ、最近学校休んでんじゃん。ズルだろ」
わたしはこいつが嫌いだ。
「・・・・・・・・・・・・・・」
「あ、ごめっ。なんかあった?」
すぐに謝るところも嫌いだ。
でも、なんとなく、こいつに話したらどうなるかな・・と思ってしまった。
結局、全部しゃべった。
部活の地獄の日々、失恋、結構細かく、しかも解りやすいように、セリフまでつけ
て。
「お前、そんないろいろあったのかよ。しかも、失恋って・・・・・。いや、付き
合ってたのは知ってるけどさ、失恋でそこまで落ち込むか?普通」
「失恋はもうあきらめた。」
「部活、やめれば?」
「やめた」
「じゃあ、別にもう気にしなくていいんじゃね?」
「先輩に会うと、にらまれる気がする。」
「ああ・・・・・それは言えてる・・・」
「・・・・・・・・・・」
どうしようもないのだ。
そのとき、あらためて気づいた。
「あ、やっべ、俺朝練あるんだよ。んじゃな」
風は、本をひっつかんで走って行った。
―――やっぱり、わたしの傷は、癒すのが難しいんだな・・・・。
そう思いながらも、なにかがちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、重いものが取れた
気がした。

P 著