スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

砂漠の花 (作者:P)

砂漠の花 【5】

女は笑って言った。
「今お茶入れますから、座ってください。」
「え・・・・・・・・・・」
なんなんだ?
こいつはなにを考えている?
もしかして、俺を引きとめている間に警察を呼ぶのか?
そんなことにならないうちに・・・。
入ってきた窓から、出ようと走った。
女は、鼻歌なんか歌いながらお茶を入れている。
誘惑か?
同情か?
こいつの本性か?
わけがわからない。
「あの・・・すいません・・・。」
「はい?」
「あの・・・俺、泥棒しようとしたんですよ?なんで、警察とかに・・・」
「そんなの、ばかげてる。」
「?」
「どうして、なんにも盗ってない人を警察に突き出すんですか?盗ってないでしょう?あなたは。」
「ええ・・・・まぁ・・・・はい。」
「だったら、いいじゃありませんか。」
女は笑った。
どうしたらいいのかわからなくなり、そのまま椅子に腰掛けた。
あの女が嘘をついているようには見えなかった。
なにか、あったのだ。きっと。
犯罪に関係のあることで。
―――俺と、同じなのか?
いや、まさか、この女が犯罪をするわけない。
じゃあ、この女の家族だろうか?
気になって仕方がなかった。
なにか、違う感じがした。
他の人と合ったときと。
この人は、誰なんだろう?
どんな人生を送ってきたんだろう?
本当に、気になって仕方がなかった。

P 著