スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

スノードロップ (作者:香夜)

スノードロップ 【3】

『幸せ』


それは 永遠には続かない
 夢のようなキラキラした 時間

今すぐに消えそうな
儚い 儚い―



「明日香ぁ? 起きろー!!
 授業終わったぞー」
上から圭汰の声が降ってくる。
「・・・ん?」

どうやら あたしは数学の授業中、居眠りをしていたようだ。

「教科書の134ページの問6、宿題だとよ」
圭汰はそう言い残して、自分の席へ戻っていった。

(134ページの問6ぅ〜〜??
 数学とか分かんないよーぅ;)
そう思いながら、教科書を片付ける。

「・・・・・」

そういえば さっき懐かしい夢をみた。

3年前の夕日が綺麗だった、 
あの日―


「ねぇ、『幸せ』な時間て、なんで短いんだろうね」
小学校からの帰り道。
圭汰と話した『幸せ』

「そりゃ、『幸せ』だからだろ?」
そう圭汰が返した。
「『幸せ』だから?」
「だってな、『幸せ』ってのが長く続くと、
 『幸せ』じゃなくなって、『当たり前』になるからだよ」
「『当たり前』・・・」
「だから、『幸せ』は短いからいいのっ!!」


そう言って、笑った君の顔は 真っ赤な夕日に照らされて
表現しきれないくらい 綺麗だった・・・


3年経った今でもはっきりと覚えている
今までで いちばん綺麗な圭汰の笑顔だった―





ー放課後ー
「圭汰、今日サッカーあんの??」
「あたりめーだろ!こないだは委員会で行けんかったし」
「そーか・・・ んじゃ、分かった」

「明日香 待ってるか??」
「はっ!?」
「ひとりで帰んの寂しいだろ?」
「はぁ? 冗談!!
 んなわけないじゃん!!」

嘘。
ホントは寂しいよ・・・


「ははは!! 分かってるって!!
 じゃな、気ぃつけて帰れよ」
「うん、ばいばい」


“『幸せ』は短いから いい”

そんな考え方ができる君は凄い


でも 
あたしたち ふたりだけの幸せな時間も 


いつかは


プツン・・・と









終わっちゃうの?

香夜 著