スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

スノードロップ (作者:香夜)

スノードロップ 【10】

「圭汰!?」

「・・・おっす。
 寝てたか?」

「う、ううん!平気だよ」


驚きと嬉しさで、胸が いっぱいになる


「・・・ならいいけどさ」
圭汰は呟くように言った。

「・・・で、どうしたの?急に・・・」

「夏じゃん?だから・・・」

「あっ、休みのこと?」

「ん。・・・いつから?」
圭汰は少し照れくさそうに訊ねてきた。

「来週の水曜日からだよ。
 そっちは?」

「俺も来週!火曜から!!」

・・・てことは、

「会える!?」

「おう!!」



やった!
ここしばらく会ってなかったもんね
・・・嬉しい!!

「んじゃ、今年も俺がそっち行くからな!」

あたしは「うん」と言いかけたが、
いつも来てもらってばっかりだったのを
思い出し、

「あっ、ちょっと待って!!
 今度はあたしが圭汰んとこに行く!!」

「えっ、でも・・・」

「大丈夫!! お金も貯まってるし。
 それにいつもきてもらってちゃ、なんか悪いじゃん!!」


あたしだって、動きたい
“会いに来てくれる”ばっかりじゃなくて、
あたしだって、
“会いに行きたい”
圭汰に・・・



「じゃ、わかった。
 来て」

「うん。行くね!
 ・・・じゃ、またね」

「またな」



あたしは携帯を置いた。



〔幼なじみだもんな〕




あの言葉が頭を過ぎる・・・




・・・うん
そうだよ
あたしは“幼なじみ”として
会いに行くだけ


期待なんて、してないよ・・・




・・・なーんてね
そうは言い切れないよ


自分で自分に呆れるくらい



まだ圭汰のこと本気で想ってる―




「・・・ほんと
 どっからどこまで“圭汰”なんだろ・・・
 あたしは」




未練がましいな・・・



なんで ひとりしか見えないの?






あたしは、髪の毛を
くしゃっと、かきあげた。

香夜 著