スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

UFOの見える丘 (作者:ひかる)

UFOの見える丘 【10】

その場所についたら、そこには久しぶりに見るシェリーがいた。

ざわわ、と風が鳴り響く、
そこは街が見渡せる唯一の場所
シェリーには、もっと特別な場所――


俺はずっと、シェリーの冷たい背中を見つめていた


どれだけ時間が経ったのだろう

シェリーが俺に気づいて振り向いた。

まるで、初めて家へ招いたときに、ベランダに立ち、
こちらを振り向いたときのように
少し不安げな表情で・・・


「まあ、どうしたの?ここまで。

どうしたの、じゃないよ。
なんで、何も言わずに消えたのさ
どうして、帰ってこなかったのさ

言いたいことは、たくさんあった。

気づいたら、シェリーを抱きしめていた
強く、もっと強く。
もう離さない、そんな気持ちが胸から溢れそうだった

「心配したんだよ。どうして、突然いなくなったの?

「この場所に呼び出された気がしたの。
 もうすぐウイリーに帰れるかもしれない

この言葉に、溢れていた思いは少しずつ消え、
もうお別れなんだね、そう思うしかなかった。

「シェリー、好きだよ」

俺は、力ある限りシェリーを離しはしまい
宇宙人とか関係ない
もう、世間体も気にしない
いっそ、誰も知らない場所へ行こう、二人で。

帰らなければならないことは知っている
でも、もしかしたら
少しでもシェリーの気持ちが揺らぐのなら・・・

ぎゅっと、抱きしめる


「痛い・・・
「えっ?
「痛いってば
・・・お互いが見つめあって、久しぶりに笑った。

もう大丈夫。
シェリーは、いつかウイリーに帰る
わかってたさ、最初から。
もう、哀しくなんかない
自分の気持ちは伝えられたんだから。


「お互いの気持ちが通じ合った時、手と手を結ぶのよ」

二人は手を繋いだ

このときはまだ、シェリーの言っている意味がわからなかった。


もう暗くなった街を、歩く二人で。

繋いだ手は、温かかった

「あ、」

シェリーの言葉の意味がわかったとき、俺は赤くなった。

その後は、何を言ったかあまり覚えていない
ただ、どうでもいいことを話した記憶だけはある。
「あの服はちゃんと着れた?」とか。






今となっては、もう何十年も昔の話

ひかる 著