雪溶け (作者:ハチ)
雪溶け 【8】
「ん?どうした?」
「あのさ・・・」
「私、・・・ずっと一輝のことが好きだった。・・・私のこと、忘れないでね」
一輝はしばらく黙っていた。
そして、ふぅと一息ついてこう言った。
「・・・分かってるよ。絶対忘れないから。大丈夫。そうだな・・・春になる頃には、きっと戻ってくるよ。」
そう言って、彼はその箱のようなタイムマシンに乗り込んだ。
扉が閉まってしばらくして、それはすっと消えた。
あれから2年が経って、私は今、大学受験を控えている。
まだ彼は帰ってきていない。
世間では、だいぶ前に、親子2人が行方不明という記事が新聞で少し取り上げられたくらい。
この前、助手の人の所へ行ったんだけど、言ってた。
「一輝くん、君のことすごく大切に思っていたんだよ」
一輝は、返事は言わなかった。
でもそれは、また戻ってくることを信じているからだと思う。
彼はきっと今もどこかで生活しているんだ。
また会えるって信じてる。
H
「おはよっ!!」
「あ、美恵。おはようっ」
いつものように1日が始まって、いつものように終わる。
辛い時もあったけど、今は美恵がいるし、毎日が楽しい。
またもうすぐ春がきて、その時には私はもう大学生の予定。
これから色んなことがあるだろうけど、私はずっと、待ってるよ、君のこと。
言ったよね。“春になる頃には、きっと戻ってくる”って。
だから私は、一輝が戻ってくるまで、いつまでも、春を待ち続けるよ。
ずっと、ずっと。
=完=
あとがき、といっては何ですけど・・・。
書いてる本人すらよく分からなくなっていったのですが、
一応「ただ春を待つ」を聴いてて思い浮かんだので書いてみました。
小説を書くのは生まれて初めてなんで、文章とかイマイチだったと思うんですけど、
読んでくださってありがとうございました!
ハチ 著