君が思い出になる前に (作者:LIJ)
君が思い出になる前に 【1】
笑ってくれればいいのに。
笑ってくれればいいのにって思った。
君が、思い出になる前に。
年末の雑踏から逃れるすべを知らず、結局スターバックスに入って一息つく
ことにした。
久しぶりに帰省したこの田舎にもこういったモールはちゃんと存在してい
て、
国内のどの町並みもどことなく似通っていく気がする。
だからだろうか、地元に対して懐かしいという気持ちもそう起こらず、
こんなに長くはなれていてもあまり気にならないのは。
忙しさにかまけて正月すら帰ってこなかった地元にもどってきたのは、
結婚相手を家族に引き合わせるのが目的だった。
ありがたいことにおとんもおかんも必要以上に喜んだし、妹なんか
「あんたでも結婚できるんやね」
なんて驚愕ともいえない表情で祝ってくれた、多分あれはあいつなりの祝い
言葉だ。
意気投合したのか嬉しくて回りが見えないのか、
おかんと妹と彼女は仲良く夕食の買い出しに出かけた。
運転手役の俺はそれ以外に用はないらしく、
「終わったら電話するからぶらぶらしてて」
などど軽く突き放され、今に至る。
LIJ 著