スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

eternal2 (作者:ナナ)

手を伸ばす 【3】

 今日もいつもどおりの朝だった。いつもどおりの時間に起きて、朝食を作り、ユウトを送り出す。その後で私も家を出て会社に行く。
 会社に行くと、いつもの定位置にセクハラ上司が睨みを利かせて座っていた。その視線とぶつからないようにしながら、自席まで歩いて行く。鞄はドスンと音を立てて机の上におかれた。
 上司にどう思われてるかは知らないが、おそらく、あまり良くは思われていないだろう。
 そこからは普通に仕事をしていた。苦痛であるパソコン作業を、肩こりをこらえながら。
 昼食の時間になれば、弁当を食べて、周りのOLとおしゃべりをする。
 代わり映えのない生活の一部だと思っていたが、今日は違った。
「ハァ…」
 今日は、何故か頭痛がした。午後になるとその痛みは激しさを増していった。
「部長、今日は早退します」
 そう言い残して、足早に帰ってきた。
「今日は、調子悪いのかな…」
 アオイがそう思うのも無理はなかった。彼女は中学、高校と皆勤賞だったし、大学も休まず通っていた。いわゆる、あまり風邪を引かないタイプなのだ。だから、頭痛なんてずいぶんと久しぶりのように感じられた。
 ユウトには電話を入れてなかった。心配させないためだ、そう思って、持っていた固定電話の受話器を下ろした。
 薬を飲んでみるが、痛みはどうも引きそうにもない。
 それを悟ると、アオイはベッドに向かった。
「明日には引いてるといいんだけど」
 そう思いながらも、彼女は眠りに落ちていった。

ナナ 著