スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

eternal2 (作者:ナナ)

手を伸ばす 【4】

 会社帰り、ユウトが自宅の前まで辿り着くと、カーテンが閉められていて、少し光が漏れていた。
「アオイ?」
 家に入るとリビングなどの電気はつけっぱなしになっていた。しかし、彼女の姿は見当たらない。
 そんな無人のリビングのテーブルの上に、一枚のメモ帳がのせられていた。
『今日は頭痛が激しいので、先に休みます』
 そんなメモが置かれていた。
「大丈夫かな…」
 呟いて覗きに行こうかとも思ったが、今日は休ませてやろうと思い、覗きにいくのはやめた。
 昨日の残り物を温めて、夕食にする。
 一人でさびしくて、おかずの味なんて分かりやしない。

 僕はそのとき、そのあとどんな風になるかなんて、まったく見当もつかなかった。
 彼女が倒れたのは、わずかその数日後だった。

ナナ 著