eternal2 (作者:ナナ)
手を伸ばす 【8】
ユウトは今日も病室の前で深呼吸をしていた。目の前には〈深谷アオイ〉のネームプレートがある。
「今日は…起きてるかな……」
そんな淡い期待を抱いてドアをくぐるが、きっといつも通り彼女はベッドの上の眠り姫なのだろう。
ガラガラ…
ドアは音を立ててスライドする。そして、落胆する。
やはり彼女は眠ったままだった。
今度は抱いていた期待が音を立てて崩れ去る。
予想はしているが、ほんの少しの希望でも持たないと、自分が参ってしまいそうだ。
ユウトは昨日放置して帰った丸椅子に腰掛けて、彼女の顔を見る。
アオイが普通に生活していたときより、明らかに顔の色は白くなっている。
腕には全く力が感じられなかった。
そのだらりと垂れた腕を、ユウトは両手で優しく包み込む。かすかに、熱が感じられた。
こんなにも、生きている証は感じ取れるのに、肝心のアオイは目を覚まさない。
その手を握り締めたまま、ユウトは祈った。目を覚ますようにと。
いつものように来ては落胆して、彼女の顔色を確認して、そして祈っていた。
きっと、周囲の人間は既に気付いていたのだろう。
病室を出ると、ミノリが壁に背を預けて待っていた。
「ミノリ先輩………」
僕は何故かほっとしてミノリに近づいた。
しかし、ミノリの反応は予想外のものだった。
「あなた…本当に大丈夫?」
まるで、僕を遠ざけるような、そんな態度だった。
「大丈夫ですよ。きちんと会社にも行ってるし」
そんな答えは求めていなかったらしく、ミノリは口を尖らせて、少し困ったような顔をした。
やがて、「まあ、いいわ」という言葉を残して立ち去っていった。
ナナ 著