スピッツの曲にまつわるオリジナル小説

めざめ (作者:あつこ)

めざめ【17】

分からないよ、誰か教えてよ。―――翔太。

涙が、また涙が出てくる。
涙腺が弱くなったみたい。私、こんなにもろかったっけ?
気づかせたのは、翔太のせいだよ。

こんなに苦しいのは・・・翔太のせいだよ。
苦しいし、辛いし、胸が痛い。

私の中で眠る「何か」がめざめそうな、変な気持ち。

死ぬ前は・・・翔太と一緒に夜中おしゃべりしていたいな。
案外、話すことなんて何も無いかもね。

隣にピッタリと寄せ合うように座って、手を握っていたい。
風が冷たくて、手からだけきっと翔太の温もりを感じるんだ。

それでね、朝陽がゆっくりと昇るのを見るの。
言葉も出ないほどそれは美しくて・・・私が涙を流しそうになると翔太は微笑むの。
「キレイだね」って言うんだ。

私は思わずうん、って頷いてそれで手を握りしめたまま屋上のてっぺんに立つんだ。

そして、一緒に空を降りていくの。
最後の最後まで手は離さないでいて、


翔太、夜中私の隣で笑っていて。
これから死ぬことを忘れさせるぐらいにずっと。

今日は、半月より少し大きめの、オムレツ型の月。
満月まであと約4日。理科で習ったのがこんな風に役に立つなんて。

4日後に、私は死ぬことにする。
―――翔太と共に。

あつこ 著