雪溶け (作者:ハチ)
雪溶け 【4】
「一輝の両親って、何してるの?」
私の何気ない質問に、彼はこう答えた。
「ん? オレ、母親いないんだ。小学校入ってすぐ、交通事故でさ。
親父はなんか、よく分からないキカイの研究してる」
「そうなんだ。なんか・・・ゴメン。」
「別にいいよ。花井の親は?」
「うちの親はさ、二人ともドイツにいる。大学生の姉と二人で暮らしてるの」
「・・・寂しくない?」
「大丈夫、一応。たまに写真とかお土産とか送ってくるし」
「そっか。」
・・・なんか気まずくなった。
「なぁ、花井」
「何?」
「・・・・・・なんかあった時は、オレを頼れよ」
「・・・えっ? あ、うん」
すごくドキドキした。
帰り道、夕焼けにそまるオレンジとピンクの空。
うす汚れた川。
親の帰りを待つ子猫。
全てがなんだか愛しくて、世界がいつも違って見えた。
なんというか、こう・・・
そう、友情が恋心に変わるってこういうことなんだって、実感した。
一輝のことが好きって思うようになったのは、このときから。
ハチ 著